単なる旅行と違って海外へ引っ越しとなると、現地で生活をするために必要なものを送らなければなりません。今まで日本で使っていた家電や携帯電話は、そのまま使えるのでしょうか?そこで今回は、海外への引っ越しの際に気をつけたい電気事情や携帯電話について解説します。
日本の家電はそのままでは使えない
日本の家電には、世界に誇れる技術が結集されています。海外でも信頼のおける日本製品は大人気です。しかし、残念ながらそんな優秀な日本製品でも、海外で“そのまま”使うことはできません。
国ごとに電圧が異なるため変圧器が必要
電気を流すパワーである電圧は、大きく分けると世界に3種類あります。
- 120ボルト:アメリカ、カナダ、一部を除く中南米、グアムなど
- 220ボルト:イギリスを除くヨーロッパ、アフリカ、中国、一部を除く東南アジアなど
- 240ボルト:イギリス、シンガポール、マレーシアなど
日本はこの中のどこにも属さず、100ボルトです。日本は昔から木造家屋が多かったため、電化製品による火災などが起きないように安全対策の観点から電圧を低くしたようです。しかしこれは、海外から日本に来た旅行客や移住者には不評です。
日本のような低い電圧の国で作られた電化製品に強い電圧がかかると、故障してしまいます。あるいは、たまたま故障せずに使えても、十分な性能を発揮できません。日本の電化製品を海外で使うためには、その国の電圧に合わせた変圧器が必要になります。コンセントの形状も諸外国で異なるので、変換プラグも必要です。ほとんどは変圧器とセットになっています。
合計ワット数を超えては使えない?
一つの変圧器に対して何口かのコンセントを差して使えるものでも、決められた容量を超えて使うことはできません。日本で使っている延長コードなどと同じです。例えば「1000ワットまで」と書かれていれば、同時に使う家電のワット数を合計して、容量オーバーしないように使いましょう。
変圧器を通すと、使えるまでに時間がかかる
よく言われるのは、日本の家電を変圧器に通すと、使えるようになるまでに時間がかかってしまうことです。特にアイロンや電気ポットに支障があるようです。まれに安い変圧器を使うと、変圧器も家電も故障することがあります。
現地で質の良い変圧器をすぐに入手できるとは限りません。日本から家電を運んで使いたいなら、ぜひ日本で変圧器を購入しておきましょう。またコンセントの形状は、国だけでなく居住する建物により違う場合があるので注意してください。
今使っている日本製品をどうしても運びたい!
使い勝手の良いお気に入りの家電に出会えたら、海外赴任だろうと持って行きたくなるでしょう。毎日使うような家電なら、なおさらです。そんな時、どのようにして運んだら良いのか、運ぶ時の注意点などを見てみましょう。
国ごとに持ち込み禁止の家電があるので注意
家電の持ち込みは、滞在する国によって大きく事情が異なります。宗教や文化、国の法律や条令により、日本では考えられないようなものを規制している国もあります。風俗的な類のものの持ち込みを禁止している国では、日本から持参したDVDやビデオテープの内容をすべて確認されたという話もあります。
そのうえ、高い検査料まで支払わされるというのですから、腑に落ちませんね。また、その地域で作られた製品でないと持ち込み禁止の国や、日本製のFAXを禁止している国もあるので、事前によく調べておきましょう。
課税も荷物保険も余計にかかる
できるだけ運ぶものは、最低限に抑えるようにしましょう。運ぶ電化製品が多ければ多いほど、輸送料がかさみます。さらに、その分課税対象となる品物が増えるので、荷物保険も高額になってしまいます。帰国する時もまた、同じように高額な輸送料がかかってしまいます。
新品を購入してそのまま持って行くと?
海外では手に入れられないからと、日本の家電を購入し、封も開けない新品の状態で送るのは止めましょう。売買目的で輸入したものと勘違いされ、高い関税を払わされることになります。一度でも開封して使ったように見せかけるなど、工夫しましょう。
船便の場合は、家電の梱包に十分に気をつけよう
精密機器は特に、厳重な梱包を心がけましょう。特に船便の場合は、何日もかけて海を渡って運ばれます。そのため引っ越し業者に梱包を任せた方が、補償面の点でも何かと安心です。
日本の携帯電話は海外では使えない
日本から持ち込んだ携帯電話は、日本の通信事業者の通信網がないため使えません。一時的な海外旅行なら、国際ローミングサービスを使って通話やメールができますが、通信料はかなりの額になってしまいます。
長く使うなら、現地の通信事業者と契約して新規購入しましょう。自宅に固定電話回線を引く前に、携帯電話の契約を急いだ方が良いでしょう。
基地局がないため電波が入らない
日本の通信事業者は海外での基地局を持たないため、通信網がありません。携帯電話の電源を入れると圏外になります。ただし、携帯電話本体に入っているアプリなどはWi‐Fiを通じて使えるものもあります。
現地の通信事業者と新規契約する
海外の住居が決まっていれば固定電話回線の手続きもできますが、まだ決まっていなかったり新設工事に日数がかかったりするようなら、携帯電話の新規契約をすぐにしましょう。この際、日本語入力のできる機種を選ぶことも重要です。
家族と一緒なら、せめて夫婦一台ずつは必要でしょう。子どもにも持たせるなら、プリペイド式も選択肢の一つに入れてみてください。
帰国したことを考え、今の電話は解約したくない
海外赴任を終え帰国することになったら、早速日本の会社や親戚、知人と連絡を取り合うことになるでしょう。帰国してすぐに使うために、また、今の携帯電話番号を変えないために、日本の携帯電話を解約したくない人もいるでしょう。そのような場合は、引っ越し前に、一番安いプランで継続できるように相談してみましょう。
無理して運んだけどいらなかったもの
こだわりを持って日本製の家電を持ち込んでも、結局は不要だったというものも案外あります。そんな経験談や失敗談を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
電化製品は現地で買えばよかった
赴任期間にもよりますが、長く住むことになるなら、毎日使うものはやはり気に入ったものが良いでしょう。しかしわずかな期間なら、現地の安いものでも十分に事足りることがあります。生活してすぐに必要な小型の家電は、航空便で運びたいと思う人もいるでしょう。
他の大きな電化製品は船便でゆっくりと時間をかけて運ぶことになりますが、どちらにしても国内の引っ越しとはかかる金額が違います。高い輸送費をかけて運び、変圧器やプラグを何個も買いそろえ、帰国の時にもすべて持って帰るというのは、結構な金額になります。
それを考えると、現地で新品を買っても、そう金額的には変わらなかったということもあります。赴任先にもよりますが、大きな電気店では、海外仕様の日本製品も手に入れることができます。
電圧の安定しない国で機器が壊れた
国の事情によっては、電圧が決まっていても常時安定して電気が供給されないこともあります。なかには、電圧が不安定で使っていた電化製品が壊れてしまった、現地の電気技術者でも直せなかった、なんてことがあるようです。
運んだものの、扱える業者がいなかった
日本に来た外国人が感動するのは、ウォシュレットと言われます。使い慣れると、もう後戻りはできないものです。
海外に引っ越しする際に、ウォシュレットを運びたいと思う人も多いようですが、場所によってタンクや便器の形が違うために取り付けられなかったり、そもそも扱える技術者がいなかったりします。さらに一番の問題は、海外ではトイレにコンセントがないところが圧倒的に多いことです。
失敗した!こんなものはいらない
砂漠地帯の近隣では、夜寝ていても口の中に砂が入るほどで、掃除が大変です。このような地域では、性能の良い日本の掃除機を持って行っても、結局は砂を大量に吸い込んで故障してしまいます。結局は、ほうきとモップで掃除する人が多いようです。
また、寒い地域に行くため、国外では絶対に手に入らないであろうコタツを持って行く人もいますが、コタツは和室があってこそのものです。実際の住居を見てみると、屋内はセントラルヒーティングのため十分に暖かかった、ということもあります。
まとめ
海外へ引っ越しする場合は、家電の何を持って行くかで悩むより、まずはその国の情報を集めることが先決です。高い輸送費をかけたあげく、持ち込み禁止で没収されたり、壊れたり、関税が高かったりするようでは意味がありません。
今では、インターネットの通販サイトで海外でも様々な買い物ができる時代です。場所にもよりますが、日本系のスーパーなどで実物を見て選ぶこともできます。なるべく運ぶ家財や家電は少なくし、現地で買い換えることをおすすめします。