地震などの災害は、思ってもみないタイミングで突然やってきます。阪神淡路大震災に続き、東日本大震災でも甚大な被害が出ました。
こうした災害により、周辺地域が無残な姿になってとても生活していけない場合や家が壊れた場合は、引っ越しをしなくてはなりません。そんな時、気をつけておきたい注意点をまとめました。
災害で引っ越しする場合
災害で引っ越しする場合、いくつかの注意点があります。引っ越しで失敗しないよう、以下の注意点を参考にしてください。
注意点1. 初動が遅いと借りられる物件がない?
実際に、震災後しばらくたってから引っ越しを考えた時、手ごろな物件に入居するために苦労した、という被災者の話があります。災害後に自宅が残っているのは喜ばしいことですが、そのせいで、住居探しの波に乗り遅れてしまうこともあります。
災害が起こると、自宅が半壊または全壊してしまってとても住めない、という人が大勢出てきます。自治体が用意してくれる仮設住宅や民間から借り上げた住宅などは、そのような人々に優先的に提供されます。また、皆が早々に住居の確保に動くので、その他の物件を探すのも非常に大変になります。
このように初動が遅いと、希望の地域への引っ越しを諦めなければならなくなってしまいます。自宅は無事でも、余震がありライフラインも回復していない状況では、引っ越しするしかありません。問題を先送りにせず、早めに行動することが大切です。
注意点2. 安全な地域へ…ハザードマップの活用
せっかく引っ越しをするのであれば、次は少しでも安全な地域に住みたいものです。そのため引っ越し先を探す際には、その地域に津波が来ることはないか、断層などが近くにないかなどを調べておく必要があります。
新居に越した後、再び同じような災害に見舞われないよう、周辺環境は注意して選ぶようにしましょう。どのあたりが危険な地域かを知りたい時は、市町村などが発行しているハザードマップが便利です。
ハザードマップには、津波や地震の発生しやすい地域だけでなく、土砂災害や洪水による被害が予想される地域も記載されています。さらに、避難場所や災害用の伝言ダイヤルなどの情報も載っています。引っ越し先候補の市町村役場や、各市町村のサイトなどから取得して、うまく活用しましょう。
注意点3. 値引きは期待できない?引っ越し業者の実状
引っ越し先が確保できても、まだ安心することはできません。次に気をつけたいのは、引っ越し業者に支払う金額です。災害が起きる前や被災していない地域であれば、引っ越し業者もそこまで忙しくないので、4月前後などの繁忙期を除いて、ある程度値引き交渉に応じてくれます。
しかし、被災地域では引っ越しをする人が多く、値引きをしなくても潤沢に依頼がある状況なので、値引きはできませんと突っぱねられてしまう可能性があります。
なかには、業者の空きがなくて困っている被災者の足元を見て、少し高めの金額設定をしてくる業者もいるでしょう。そのため、必ず相見積もりをして、良心的な金額で請け負ってくれる業者を探すことが大切です。
注意点4. 周辺状況によってはトラックが入れない?
家を確保して引っ越し業者と契約して、いざ引っ越し!というところまでこぎつけても、引っ越し当日になって、思ってもみなかったトラブルが起きてしまうこともあります。例えば、自宅前までトラックがたどり着けないといったケースです。
業者の営業所から自宅までのルートで通行止めがあったり、自宅周辺のがれきの撤去が進んでいなかったりすると、起こってしまう可能性が高いトラブルです。迂回路があれば時間は遅れても作業に来てくれますが、数本しかない道が全部ふさがってしまっている、などの状況では難しいでしょう。
また、道の一部が埋まっている状態の場合、軽自動車や普通車などは通れるからと安心していても、引っ越し荷物を大量に入れるトラックは入れない可能性もあります。申し込み時点で、業者の営業マンに相談しておきましょう。
普段は全く気にしなくて良いことなので、震災で気が動転している時にそこまで考えるのは難しいですが、このようなこともあると覚えておきましょう。
注意点5. 役所の機能がストップ!そんな時はどうする?
引っ越しの準備が整ったら、忘れないようにしておきたいのが役所での手続きです。震災によってバタバタしていても、通常通り転出届や転入届を出さなければいけません。しかし、被災地域だと役所も同時に被災してしまって、手続きが全くできない状態になることがあります。
そんな時は、近隣の役所で代わりに手続きを行ってくれるので、そちらを利用するようにしましょう。また、電気やガス、水道、インターネット回線の解約なども、忘れずに手続きしましょう。
震災に伴う引っ越しだと、やることが多すぎて忘れてしまいそうですが、こんな時こそ落ち着いて、一つ一つこなしていくことが重要です。
注意点6. 災害時に使える補助とその条件をチェックする
「引っ越しはしなきゃならないけど、被災して手元にお金がない!」といった場合は、公的な補助を利用するようにしましょう。利用できる条件がそろっているなら、これを使わない手はありません。
今後の生活を安定させるために、これらの制度が使えるかどうかの確認は必ず行うようにしましょう。災害時に用意されている、引っ越しをするための支援としては以下のようなものがあります。
被災者生活再建支援制度
被災して今住んでいる住居がとても住める状況ではない人に、一定の金額が支給される制度です。住居が全壊か大規模半壊をした世帯が対象で、東日本大震災の時には全壊で100万円、大規模半壊で50万円が支給されました。
また、壊れた住居を直す場合は、建設や購入で200万円、補修で100万円が追加で支給されています。さらに、公営住宅以外の賃貸を借りて引っ越しをする場合は、50万円の追加支給がありました。これらの支援金の用途は指定されていないので、受け取ったら必要だと思う部分に任意で使用できます。
また、噴火などにより長期の避難が必要になるなど、家が壊れていなくても利用できる場合があります。このほか特例もあるので、国から出される制度の概要が出たら、利用できないか確認をしましょう。
公営住宅への入居
低所得などの理由から、震災後の生活を自力で行うことができない世帯が対象です。このほか、公営住宅を管轄している都道府県や市町村が別途定める、住宅困窮要件という対象基準があります。公営住宅への入居を希望する場合は、都道府県や市町村に問い合わせましょう。
特定優良賃貸住宅等への入居
上記の公営住宅への入居と同じような支援制度ですが、住居として斡旋されるのは、自治体が定めた特定優良賃貸住宅などです。こちらに入居するためには、被災していて住居に困っている状況に加えて、所得に特定の条件が求められます。また、この条件は各自治体によって異なるようです。
こちらも、都道府県や市町村に問い合わせをすると、自分の世帯がこの制度を使えるかどうかが分かります。仮に、自分の世帯が所得条件から外れてしまっていたとしても、状況によっては入所させてもらえることがあるので、あきらめずに相談してみることが大切です。
なお、特定優良賃貸住宅を借りる条件に関しては、暮らしの達人シリーズの「部屋探しの達人」で詳しく解説しているので、合わせてチェックしてください。
まとめ
災害に遭うと、今までの生活が一転して慌ただしく動かなければならなくなります。できるだけ素早く対応して利用できる制度は利用してしまうのが、早期に立て直しを図るための近道です。万一被災してしまった時に、一刻も早く安定した生活に戻るため、普段からこれらの注意点を頭に入れておきましょう。