現在の建築法では6階建て、条例では5階建ての建物にはエレベーターの設置が義務付けられていることがほとんどです。
一昔前の団地や県営住宅などは5階建てでもエレベーターがない建物も珍しくありません。引っ越しの際、実は、エレベーターの有無が大いに料金に関係してきます。ここではエレベーターの有無と引っ越し料金の関係について説明します。
階段で運ぶと引っ越し料金が高くなる?!
昔あちこちに一斉に建てられた公団住宅などは、5階建てでもエレベーターはありません。5階に住んでいる人は、ゴミ出しでも、忘れ物に気付いても、赤ちゃんを抱っこして日々の買い物に行くにも大変です。
エレベーターがないとどんなデメリットが?
引っ越しの際、重い家具や家電の搬出入を人力による階段作業では、時間もかかり体力も使うことから、階数ごとに1階あたり1,000円から2,000円の割り増し料金を設定している業者がほとんどです。
全体的に重量物が多い場合は、さらに高額な割り増し料金を設定したり、作業員に不満が出ないように手当を付けるために値下げ額を抑えたり、作業員を増やすことにより人件費が増えたりすることも考えられます。
料金的なデメリット以外にも、階段での追い越しができないので時間がかかったり、大きな物を運ぶ時に階段の壁や手すりにこすってしまったり、荷物を落としたりぶつけたりといった破損の発生率も高くなってしまいます。
エレベーターに乗らない物はどうするの?
ベッドなどの組み立て式の物は分解して運びます。ただし、エレベーターのサイズによってはダブルサイズのベッドマットが乗らないことがあります。その際には、階段で手運びをしたり、ひもをかけてベランダから吊り作業を行います。
ピアノのような大きな荷物でも9人乗りのエレベーターならほとんど心配はありません。それよりも、設置する部屋までの移動経路が問題になります。
奥行があるので、通路のコーナーをうまくかわして運べなかったり、玄関から部屋までの廊下の幅や曲がり具合、ドアの角度などによっては、窓からのクレーン作業での搬入が必要になります。
エレベーターがあっても割り増し料金がかかる場合がある
エレベーターがあっても以下の場合、割り増し料金がかかる可能性があるので、業者と打ち合わせや確認をしておきましょう。
エレベーターの稼働率が悪い
何十階もあるような高層タワーマンションなどでは、地上から住居の階に着くまで、かなりの時間がかかります。
他の住民のエレベーター利用を優先していると、待ち時間ができてしまいます。結局は引っ越しの所要時間が長くなるため、あらかじめエレベーター使用料の設定をしている業者もあります。
特に高層ではないマンションの場合でも、稀に住戸の数とエレベーターの基数が見合っていない建物があり、四六時中エレベーターが稼働していて効率の悪い場合、その分、料金も高くなってしまいます。
引っ越し車両の駐車位置から玄関までが遠い
部屋番号が○○1号室の場合は、その階の一番端の部屋と分かります。また、○30号室の場合だと、同じ階に30部屋はある大きなマンションだと分かりますね。
このように、エレベーターホールから部屋まで結構な距離がある場合、台車が使えれば良いですが、もしそうでなかった場合は部屋まで運ぶ時間がかなり長くかかることになり、結果、割り増し料金がかかることになるかも知れません。
さらには、引っ越し車両を停めた位置からエレベーターホールまでの距離が遠くても同様です。このような場合、養生資材をかなり多く必要とするので、養生資材の追加料金が必要になってくることもあります。
この辺の取り決めは、階段の割り増し料金のように、あらかじめ階数ごとの料金設定があるわけではなく、業者によっても考え方は様々ですので、見積もりの際には事前によく相談し、養生の仕方や、作業内容の確認をしておくことが大切です。
事前に管理会社に確認しておくべきこと
引っ越しが決まったら、現在住んでいるマンションや転居先のマンションの不動産屋に連絡をし、引っ越し方法のルールの詳細を確かめなければなりません。不動産屋が気を利かせて取り次いでくれることもありますが、できることなら自分で確かめた方が間違いがありません。
エレベーター点検日や工事日とかぶってないか
せっかくエレベーターのあるマンションで、引っ越し料金も安く済んでいるというのに、頼みのエレベーターがちょうど点検日に当たっていて、停止して使えないのでは元も子もありません。
同様に、電気設備の点検で停電にならないか、断水にならないかなどの不都合がないかも確認しておくべきです。また、排水管清掃や修繕工事などで、マンションの敷地内に別の作業車が先に着いていて、引っ越しトラックの駐車ができないようでは困ります。
荷物の積み込みと積み下ろしの作業の際には、可能な限り出入り口の近くに駐車したいものです。一番作業がしやすい場所の駐車スペースの確保もお願いしておきましょう。
退去の際には、管理会社だけでなく管理人にも事前に一言挨拶を入れ、何か注意することがないか聞いておくと安心です。
同じ時間帯に他の引っ越しの予定がないか
世帯数の多い賃貸マンションでは、引っ越しの繁忙期では転出入が多く、あちこちで引っ越し業者のトラックが並んでいる光景を見かけます。玄関口から少し遠くの方に停めなければならない引っ越し業者は荷物の運搬のたびに大変そうです。
新築マンションの一斉入居であれば、管理会社が引っ越し業者を指定して幹事業者とし、なるべく引っ越しがスムーズに進むように、うまくスケジュールのやり繰りをして作業に当たるものです。
それが、様々な引っ越し業者が同じ時間帯に集まってしまったら、階段やエレベーターの使用、トラックの駐車位置、養生の問題など、何かとトラブルが起こりがちですし、作業時間も倍かかってしまうことになります。できれば、他の引っ越し予定とかぶらないようにしたいですね。
エレベーターと周囲の養生はどこまでやる?
マンションの組合や管理会社で独自のルールを設けていることが多く、玄関ホールとエレベーターまでの距離があり台車を使いたい場合は、床にシートを敷いたり、壁やコーナー、エレベーター内の養生をどこまでやれば良いか、確認する必要があります。
複雑なルールのため理解するのが難しく、養生の専門用語が分からないこともあるので、資材の準備も含めて業者に下見をして確認してもらった方が確実です。当日の作業担当のリーダーであれば安心ですね。
新築や分譲タイプのマンションでは、さらにルールが厳しく決められており、業者の指定や養生の仕方を徹底していたり、特に新築の高級分譲マンションなら、合格と見なした引っ越し業者を利用することが義務付けられている場合もあります。
まとめ
エレベーターに乗らないような大きな物は、クレーンで吊り上げるなどの特殊作業が必要になる場合もあります。出ていく際にも、同じように特殊作業料金がかかることを思えば、運ぶ物が高額だったり思い入れのある物でもなければ、買い替えた方が安く済むこともあります。
このように、一口に引っ越しと言っても、持っていく荷物や引っ越し先の物件により、費用は大きく変わってきます。物件を選ぶ時は間取りやロケーションだけでなく、「エレベーターがあるか?」といった引っ越しのしやすさまで考慮すれば、より安価で、より快適な引っ越しができることでしょう。